茨城支部長ご挨拶

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茨城支部長
松井 玄考

「レジリエンス」は根付いたか

東日本大震災の惨禍による反省から、国レベルではレジリエンス(国土強靭化)計画に大きな予算が付きました。その後も熊本地震や西日本豪雨災害等数々の自然災害に見舞われ、ダメ押しのコロナ禍で社会が試されようとしています。今、戦後の大きな社会危機の中で2020+1東京オリンピック、東京パラリンピックが実施されました。私は、今日のオリンピックが科学技術での勝負だったり、商業主義で事が運ばれる大会だったりで、その誘致には醒めていましたが、マスコミによるオリンピック開催への批判的態度や、それに流されてボランティアが辞退するに及び、私の「へそまがり」が一気に噴出し、開催の遂行を強く望むようになりました。東京開催を自ら切望しマスコミも支持しておきながら、私たち自身の気の緩み指数とも言える感染拡大に流されての開催中止論は、他方で、死に物狂いで練習してきた選手や関係者の皆さんに失礼であり到底賛同できないからです。閉会式で57年前の古閑裕而のオリンピックマーチには思い溢れるものがありました。昭和時代の東京オリンピックは日本を挙げての総決起大会でした。今回のオリンピック開催の是非論はさておき、度重なる不祥事等で直前まで紆余曲折を経ながらも、あれだけの大会を無事に遂行し終えた大会関係者のご苦労には察して余るものがあり、心より称賛します。また、これに対峙する形で大会を支えた医療関係者の方々にも心から敬服するものです。さて、東日本大震災と原発事故を経験した日本の社会は「失敗したこと」と「上手く行ったこと」を整理して、想定外の残余リスクに素早く対処できるためのレジリエントな安全哲学を追求してきました。この「うまく行ったこと」からの学びを強化するシステムとしての安全哲学の成果はその後の天変地異、とりわけコロナ禍に生かされたでしょうか。コロナ禍についていえば、戦後の危機管理と安全保障の制度的脆弱さなどの要因により対策が後手後手になってしまい、これをすべて現政府の責任にするのは酷でしょう。レジリエンス的に言えば、「お願いベース」だけでの制度の下でこれだけの感染で抑えられているのであれば、成功ともいえるのではないでしょうか(反論あるでしょうけれども)。コロナ禍でレジリエンスを試された最大の試練がこの度の東京オリンピックではないでしょうか。開催までの感染防止対策のモニタリング(監視)、陽性者が出ることも「予見」し、その場合の抑え込みの「対処」、現場での臨機応変な対応を「学習」し、結果として、「オリンピックこそが感染拡大の原因」とは言わせなかった努力はレジリエンス最大の成果だと思います。一億総国民が団結しての大会ではなかったかも知れませんが、私たちは昭和の時代に置き忘れてしまった良き日本の心意気に思いを馳せても良いのではないでしょうか。労災事故で右腕を失った宇田秀生トライアスロン選手の銀メダル、IPCパーソンズ会長の挨拶の中で、「レジリエンス」を大会テーマに掲げたことなど、安全衛生にも学びの多い時でした。コロナ禍の勝負は今後も続きそうですが、私たち個々の心と企業の心の集合体も一丸となって事にあたる心構えは、「レジリエンス」の基礎的な必須条件だと思います。

(一社)日本労働安全衛生コンサルタント会・茨城支部では、ホームページを運用しています。このホームページの目的は、茨城県内の事業者の皆さまに、労働安全衛生コンサルタントの情報を提供することにあります。私たち労働安全衛生コンサルタントは、中小企業の良きパートナーとして、企業の成長発展のためのお手伝いをしております。こうした活動をより積極的に利用していただくために、このホームページで広報していきたいと考えています。茨城県で登録されている労働安全衛生コンサルタントは、現在62名おります。どうか良きパートナーとして我々労働安全衛生コンサルタントをご利用ください。